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大峰屈指のゴルジュを擁する池郷川を今年の春合宿に据えた。GWが近付くに連れ不安はその振幅を増幅させた。最大の課題は不要な恐れを如何にして取り除くかであった。
5/4(晴)池原〜下部ゴルジュ帯〜中部ゴルジュ帯〜2条13mの滝手前
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GWのラッシュを避け夜の169号線を池原へと向かう。空が白み出す5時頃に到着。重いガチャと、3日分の食料と幕営道具を担ぎ入渓。暫らく川原を歩いて行くと、深緑の淵が現れ、その奥に両岸を急激に狭めたゴルジュが出現する。瀑音の反響が岩門から放たれ続け、池郷ゴルジュの始まりを強く感じる。
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ザックを右側に・ヘルメットを後ろにズラし淵の左側を泳いで右岸カンテに取り付く。基部にザックを下ろし空身で回り込むとトユ状7mが見える。ザックの天蓋・ショルダーパッドにザイル末端をスリングで固定、他末端をギアラックにビナで止め、カンテを登り、二つ目のバンドを滝見テラスへとトラバース。ザイルをフィックスし、カンテ頂部に戻りザックをユマールで荷揚げする。
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滝見テラス奥の凹角を一段上がった所から再び空身で上流側の垂壁を登り荷揚げ。高巻いて右岸から入るガリーに懸垂下降。
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川床に戻ると目の前に堰堤が現れる。これは左側の馬鹿に蹴上の高い階段を攀じ登る。
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川原を歩いていくと右側に100m岩壁が現れる。
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右岸からの枝沢流入と同時に本流には大きな淵を擁するS字滝が掛かる。空身で淵右側から泳いで行き落ち込み右手に取り付く。大ガバでレストした後アブミを掛け、かぶった落ち口右手へと這い上がる。荷揚げして流芯右手をトラバース。
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一息つく間もなくエコ滝が現れ、空身で淵の右側を泳ぎ手前に張り出した壁沿いに回りこむ。そこから落ち込みへ向かう流れに乗り落ち込み右手に取り付き滝芯直ぐ右側を直登。水流と飛沫は激しいがホールドはふんだんにある。
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岩棚と川原歩きの後、下部核心の終わりを告げるネジレ滝の手前で小休止。
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ネジレ滝は淵の左を泳ぎ、強い水流に負けじと壁の細かいホールドを拾いながら落ち込み左手に回り込む。滝芯左手は外傾しているがフリクション良好で安心して登る事ができる。落ち口前方には腹に穴を開けた奇岩が出迎えてくれるのだが、それを楽しむ間もなく荷揚げ途中にザックが上手く滝芯に入り込み、背筋と上腕二頭筋を酷使してしまう。消耗した体で続く4mの滝へと左岸をへつる。
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下部ゴルジュ帯を抜け暫らくの川原歩きの後取水口が現れる。これは左サイドの凹角をステミングで上がる。
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右から枝沢が流入し本流には堰堤が掛かる。これを左側から登る。
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川原を暫らく歩くと巨岩の両脇から落ちる小滝が小淵を挟んで連続して現れる。一つ目は左端CSの隙間にフィックスが掛かっている。水溜りには井森が泳いでおり初夏を感じる。
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間もなく長い瀞が始まり、数10m置きに小滝を掛けている。ここはバンド上を歩く。瀞の最後尾4m滝は右岸をへつるが、ガリーを跨ぐ1ムーブが悪い。
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上部ゴルジュ帯の第一関門であるコンコン滝は右岸ルンゼを登る。
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谷間正面に岩や塔を見ながら徐々に大きくなってくる巨岩地帯を歩く。1〜3ムーブ程の巨岩を乗越す度にザックを下ろしスリングで引き摺りあげる。幕営道具が恨めしい。
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瀞を泳ぎ小滝を越えると大岩がゴルジュを塞ぐ。ここは空身で大岩の下を泳いで潜り、右岸の隙間にキャメロット+アブミの架け替えで登る。荷揚げして淵を泳ぎ、磨かれた7m滝は左側のクラックを空身でキャメロット+アブミの架け替えで登る。クラックにはボルト1本・ハーケン2枚、落ち口にはハンガーボルトの残置がある。
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日当たりの悪いゴルジュを進み続け、もう随分寒くなっているのだが、瀞場は弱まる気配をみせない。なるべくバンドを歩いたり、へつったりして空気中を進もうとするのだが思うようには行かない。
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3m滝を越すと淵の向こうにネジ滝が現れる。淵の壁際に皮の付いた筍が浮いている。泳いでいくと実はそれが風船の様に膨らんだ狸の水死体である事が分かり、ゲンナリしながら横を空身で泳ぎ右岸リッジ基部に辿り着く。直上クラックにキャメロット+アブミをセットしテラスに上がる。フェースにはボルト・ハーケンの残置があり、これにアブミをかけて抜け、上部はフリーでテラスまで上がる。途中ルート上に水晶が沢山詰まった空隙があり、元気を取り戻して荷揚げを頑張る。
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大股谷の流入を右岸に見送ると長い淵の連続が始まる。間に斜瀑を掛けながらゴルジュはどんどん幅を狭めていき、泳ぎに次ぐ泳ぎとなる。先に40mの大淵が見えたところで右岸に上がり今夜のビバーク地とする。
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ツェルト1張り分のスペースをなんとか作り出し、湿った薪を集める。濡れたウェットを脱ぎ炊き火に当たる。今日頑張ったお陰で明日には本谷を抜け下山できる目処が立ったので、3日分の食料と行動食を減らすべく晩餐は盛大にやり、2条13mの滝の瀑音を聞きながら眠りに付く。
5/5(晴)2条13mの滝〜池郷川本谷〜天狗山コル〜前鬼口〜池原
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昨晩炊いた米にジフィーズのどんぶりで朝食を済まし、冷たいウェットスーツを身にまとう。懸垂で川床に降り、40m大淵の右岸沿いを泳ぎ、滝左手のルンゼに上がる。
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ここからは空身・ソロエイドで立木疎らな壁を登り、落ち口下のテラスへトラバース、テラスから落ち口へ凹角状を直登、松の木にザイルをフィックスしてトラバース地点まで戻りザックを荷揚げ、担いでビレイポイントまで登り返した。
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続く5mの滝は滝芯右手のクラックを目指し空身で淵の右側から泳いでいくものの、見た目以上に水流が強い。壁の細かいホールドを拾いながら進むがとうとう前に進まなくなり、後退しようと振り返ったその刹那後ろに引き摺り込まれる。パニックに陥りそうに成るのを必死でこらえて、大きく息を吸い込み水中へ潜る。すると青黒い水の中を赤色のロープが真っ直ぐに伸びているのが見えた。再び水面へ戻る。2条13mの滝の落ち口へとロープが向かっている。必死にロープを手繰りながら泳ぎ戻り落ち口手前で岩棚へ這い上がる。どうやら泳いでいるうちにロープが滝芯に乗り、流れに持っていかれた様である。散々水を飲まされてタプタプになった体で、再び水に入り左岸バンドへとアブミで登り、外傾フェースをトラーバースした後、消耗しきった体で荷揚げ。岩陰へ降りて湯を沸かし、冷え切った体を温めた。
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大休止後、瀞の左岸をへつりと泳ぎを交えて進み、上部ゴルジュ帯最後の5mの滝を右岸クラックから抜ける。
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躍り出た本谷は、新緑と光が立ち込め、最後の山桜が花を散らせている。劇的な渓相の変化に感激しながら川原を進むと徐々にナメが出始め、進むほどにナメは大きく長くなる。
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2段15mの滝はザックを背負ったまま滝芯右を直登、その後川原をトボトボと歩く。
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小滝と両岸に台地状地形が何度も現れ、小池宿址を過ぎた当たりから水流が減りだし、最後の長いガレ場登りが始まる。10歩に一回立ち止まるようになった頃、稜線直下のガリー登りに突入、最後は天狗岳コルへと飛び出す。背丈の低い茶色い笹原は気持ちよく濡れ物やガチャを脱いで、ジオラインEXPに着替えた。
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水を吸って重くなった装備を背負い前鬼宿坊へと登山道を降りる。
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前鬼川不動の滝〜前鬼口までは奈良から来られていた方に車で送って頂き、前鬼口〜池原(池郷川本流取り付き)までは、バスボード牽引車行き交う169号線をテクテクと歩き、辺りが真っ暗になり風が冷たくなりだした頃、前日止めたデポ地へと辿り着く。
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転がり込んだきなりの湯に、赤くなった肩と腰がひりひりと染みた。
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池郷川は下部〜詰めにかけて、滝は例外なく大淵を擁してゴルジュの中に納まり、縦横高の変化と共に水と光の変化も著しかった。ゴルジュ帯を抜け上部のナメを歩きながら、抱き続けてきた不安が霧散していくのを感じた。
コースタイム
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5/4:池原(5:50)〜取水口(10:30)〜ネジ滝(15:10)〜2条13m滝手前ビバーク地(16:40)
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5/5:ビバーク地(6:00)〜小池宿址(11:30)〜天狗岳のコル(14:15)〜池原(19:15)